境界とは、果たして揺るぎない絶対的なものでしょうか。
境界は、何かと何かを区分することによって生まれ、その「何か」のアイデンティティを明示します。
境界によって生まれたそれらは、合い隔てた何らかの要因による関係性を孕み、
関係性によってアイデンティティが保持され、見えない壁として境界を象ります。

私の作品は、作品、場、鑑賞者の3つの相対的な関係性によって成立することを基盤とし、とある空間に「点」と「線」から紡いだ形(面)を与えます。
その形を空間の中に組み込み、第三者の介入によって、一つの知覚空間を生み出します。
それは鑑賞者によって生み出され、鑑賞者にしか経験し得ない知覚空間です。
私は作品を起爆装置として、人の潜在的な知覚の跳躍を促し、その知覚の揺らぎによって引き起こされる経験から、その先に繋がる個々の世界へと飛躍させたいのです。

「sightseeing room」では、見えないものの中に実際には存在しない「壁」を鑑賞者自らが無意識に創造してしまいます。
鑑賞者は自らによってその「壁」を壊し、実際に一線を越える経験を成します。
見えないものの先にあるものを見ようとする行為、あるいは、目に見えるものの背景を見ようとする行為として、「壁を取り払うこと」とは、「想像すること」に繋がると考えます。

このような壁は、私たちの日常の中に多く存在しています。
私はその壁を取り払うことによって見えてくるもの、見えないものの本質を浮き上がらせたいのです。

見えないということ、何もないということ
見えるということ、見えてしまうということ
実際に存在するか否かは問題ではなく、そこから想像させること

私は想像から生まれるまだ見ぬ世界を押し広げたいのです。